こんばんわ! 悠久です。
今日はちょっと怖い話をしましょか?
おばけの話じゃありません。
若い頃の現実にあった話です。
人間って暗くなると
「ムクムク起き出すもの」がある?
何でしょうか?
それは欲望です。
また、それに輪を掛けるのが「お酒」です。
「お酒」って人間の欲望に火を付けます。
メラメラ燃え上がる炎
それが欲望に直結してます。
「若い頃、俺は夜になると
じっとしていられない?」
俺の欲望が動き出す。
それが「お酒」と「オンナ」
これに「お金」が加わります。
ぴったし「お酒」と「オンナ」
と「お金」がエサです。
これに引っかかるんです。
暗がりにフラフラ迷い込む、
アリのように群がる男たち
その場所にチラッと灯りがあると
それもピンク色に灯りがあると
群がる虫のように
釣られて立ち寄る
そんな出来事のひとつです。
夜も10時を回ると酔っぱらった
おっさんたちが今日もうごめいている。
俺たちふたりもその仲間
飲み足りない
いや~
「遊び足りないんや!」
なんかモヤモヤしたものを吹っ飛ばしたい
「今日は給料日や!」気も大きくなっとる
そんな子羊たちを見越して
キャッチーたちが獲物を狙ってる
息を殺して茂みから狙ってる
「おにいさん、お疲れ様です~
いい店ありますよ、かわいい女の子
もいます。安心して飲めるお店です。」
「ほお~っ、どんなお店?」
「いい子、居るの?安いか?」
「1時間飲み放題、歌い放題
それに触り放題ですよ。
それで三千円ポッキリ!」
俺のムラムラがこの「触り放題」と
「三千円」の安さに
反応した。
理性が引っ込み、欲望が支配する
こうなると冷静な考えは出ず
「お客さん、入らなくてもいいから
覗くだけ覗いてくださいよ。」
この言葉が背中を押す
「じゃ~覗くだけやで
気に入らんかったら、帰るで」
「ゼンゼン大丈夫ですよ、覗くだけで
金、取りませんから
ご案内します。」
と案内されるままに店に行った。
雑居ビルの5階、狭いエレベータ
で上まであがる。
もう、一度聞いた
「ほんまに三千円でいいかい?」
「大丈夫ですよ、三千円ぽっきりです。
安心して下さい。女の子も付きますよ」
と5階で降りると
いくつかのバーが並んでいる。
「カトレア」というお店
ドアの呼び鈴を押す
中からガチャと開き
店のカラオケの音が廊下に
こだまする
先客が、ひと組
ボックス席で歌っている
店の中には女の子が三人
黒服の男が「席に」案内する
導かれるままに席に着いた
「氷」と「ミネネラルウォーター」
と簡単な「つまみ」を持ってくる
早速、女の子が二人が
席に来る
「お飲み物は何がいいですか?」
「飲み放題のドリンクでいいよ」
「じゃ~ビールで乾杯しましょう」
とビール瓶が3本運ばれてくる
それぞれのグラスにビールを
注ぎ、女の子の合図で「乾杯!」
俺の右となりに座ったのは
結構、歳いってる
30代半ばかな?
でも俺って年増好きや
「今日はどこで飲んできたの?」
たわいもない話に盛り上がる
程なくして何か取ろうと
女の子がせがむ
「じゃ~フルーツの盛り合わせを
頼んでいい?」
「あ~いいよ」
何気なく言ってしまった
これが後で悪い結果に?
次に、女の子が
「何か飲んでいい?」とせがむ
甘ったれた声と俺の手を
自分の胸に置く
ダレッ~「胸のふくらみが手にあたる」
「いいよ、好きなモノ頼んで。」
ここでちょっと躊躇するが
手が胸にあたるともうダメ
水割りとロックが運ばれてくる
「お兄さんたちも飲む?」
「いや、ビールでいいです」
・・・無言
「じゃ~同じものを!」
今度は「歌を歌え」とせがむ
「古い演歌しか知らない」
それでもとしつこくせがむ
何曲か
歌い終わると「お腹すいていない?」
と聞いてくるが、ここでも躊躇
「大丈夫かな?」と気にかかる
友達もそろそろ出た方がと
目で合図している
やはり同じく躊躇している
約束の1時間にはまだ時間があるが、
超えないうちに出た方が無難と
女の子に「清算」してと頼む
女の子が「もう帰るの?」
と訴えるが、酔いも醒めてきた
黒服の男が紙を持ってくる
伝票ではなく、ただのメモ書き
「七万九千円!」
「え~っ、話が違う。
飲み放題、歌い放題、触り放題で
三千円やろ!」
「お客さん、フルーツの盛り合わせと
水割り、それにロックも飲んでるやろ
あれは飲み放題には入ってない。」
「水割りとロック1杯づつや、
それに飲み放題にフルーツ
付いてるんじゃないの?」
「お客さん、飲み放題は
ビールとつまみだけですよ。
それにあれだけ触っといて
そらないで!充分楽しんだやろ」
「でも、そんな金持ってへんで
こんなぼったくりは払わんで」
「お客さん、無銭飲食やるんやったら、
きっちり話しましょか?」
と凄んできた。
「ここは他のお客さんもおるから、
事務所で話ましょう」
店の奥が事務所になっていた。
黒服の男がノックした。
中からガチャリと音がしてドアが
開く。
ここで気づいた
中に通されると
短く刈ったサングラスの男がいた
どう見てもヤクザや
勝ち目はない
「お客さん、困りますなぁ
あれだけ飲んで払えんとは
警察に言いますか?」
「めい・・・明細書を見せて下さい」
それだけ言うのが精一杯やった
男がメモ用紙に
フルーツ 3万3千円
水割り 2万円
ロック 2万円
飲み放題 6千円
合計 7万9千円
「これが明細や」
「こんな金額、払えないわ」
絞りだす様に言った
「それに現金持ってへんわ!」
「お客さん、クレジットカード
持ってるやろ!
それで払えや!」
「警察に電話するわ
ここから電話するわ」
「お客さん、舐めたらあかんで
こっちは商売でやっとんねん
お前らみたいな酔っ払い
いつまでも相手出来へんのじゃ」
と言うなり、右のこぶしが
腹に一発飛んできた
「う~う、」とうずくまった。
連れは胸倉をつかまれ、あえいでる
「もう、一発やろか?
それとも払うか、どっちや?」
実は、俺たち給料を銀行から
今日降ろしてた。
財布に5万円ほど入ってる
「やばい、抜かれたらどうしょう。」
連れと小さい声で相談した。
「割り勘で払おう!」
「あの~払います。」
ひとり4万円づつ出した。
「持ってるやないか!」
「領収書もらえませんか?」
「なんやて、最初に出し渋ったから
出されへんで。」
シブシブ納得するしかなかった。
帰り際、
なんと、出口のドアは鍵がかかっている。
こりゃ、逃げんれんかった。
後ろから
「ありがとうございます。」
という黒服の男の声がした。
腹の痛さよりふところの痛さが応えた
出て近くの地下鉄のベンチで
話し合った。
「これで済んで良かったんや」
連れは
「俺は納得出来へん、警察に行こ!」
「いや~警察に行っても無駄や!」
「もう、払ったやろ、
あれは納得して払ったのと同じや。
全部取られんで良かったんや」
連れは、それでも納得出来ないようで
「くそ~っ、高付いたなぁ~
明日、犬のウンチをあの店の前に
撒いたる。」
「そんなん、しても無駄や
手間暇かかるだけや!
それより、高い勉強代やと
思っとこ、仕方がない。」
こうして、無事、脱出は出来た。
高い教訓代として記憶に残った。
そして、会社の同じ仲間にも伝えた。
それ以後、あのミナミの飲み屋街には
行っていない。
ネットで調べると
こんな金額では済まなく
数十万円の請求もざらではない
7万9千円で済んで良かったのか?
そう思わないとやるせない
でも、人間って不思議や
あれ程、痛い目にあったのに
喉元を過ぎるとマタマタ夜の暗がりと
ピンクの灯りを求めて街を彷徨う
あれ以来
呼び込みは信用出来へん
街歩いていても
どんな、呼び込みも無視や
この前もコスプレの女の子が
渡すティシュを払いのけてしまった
後ろで「こら~おっさん!」
と怒鳴ってる。
今はあの時の勢いはないものの
本質的には男の欲望には
尽きなく、懲りていない
若くはないが
欲望は残ってる
それが今は別な方向に向いてるだけや
あの時は、実際に被害にあった側に居た
そして今は、この経験を文章に書いている
言葉と言葉をつなげて
そして、あの時の情景と気持ち思い出し
みんなに伝えようと文章にする
あの時の経験が貴重な話題になっていく
今にして思えば、
自分の欲望はほどほどにしとくべき
と年寄りじみた文句を並べてる