リゾートホテルに到着しました。
山の中の落ち着いたリゾートホテルに到着しました。
本日は、少し離れたところにあるピアノを
作っている会社の慰安旅行にお伴しました。
社長さん自らがピアノを演奏して、
小さなコンサートを開いている会社です。
また、従業員の方もみなさんピアノの演奏が大好きで、
本当にピアノを愛しています。
そんな社長さんのご希望で、
ピアノの生演奏が聞けるリゾートホテルに宿泊されます。
ピアノ演奏が聴けるホテル「奥道後”壱湯の守”」
しかし、社長がおっしゃるには、
「本格的なピアノの生演奏じゃなくてホテルのロビーに
うっすら流れるピアノ音があればいい」
そのホテルでは、お客様が到着される時間帯にピアノの生演奏をされています。
着いた日も若い女性の演奏者がピアノを弾いておられました。
残念ながら、私には曲名はわかりませんが、社長以下従業員の方々は、
うっとりとフロント近くの椅子で聞いておられました。
フロントで宿泊の手続きをしていると
フロントの係りが「今日の演奏は、地元の音大生の生演奏です。
彼女は来年度から東京の有名な楽団に入ることが決まっています。
それまでのアルバイトで演奏してもらっています」と説明してくれました。
今回の旅行は、出発の時点から
いつもの慰安旅行と違い、バス車内でも持ち込まれたテープに
クラッシック音楽が入っており、車内のバス内も、
とても静かな音楽が流れていました。
こんな慰安旅行もあるのだと感心しておりました。
それに本日の宴会は、宴会場では行いません。
レストランでテーブルに座って洋食を頂くのです。
そのレストランでも先ほどの音大生が演奏しており、
いつもの宴会のカラオケも余興もありません。
食事が終わると社長自らが、立ち上がり、拍手をしながら、
音大生のピアノのそばで話しかけています。
私も、音大生の奏でる演奏にうっとりとして聞き入っていました。
大阪に戻ったら、ピアノの演奏のカセットテープを
買ってみようと思った程です。
宴会も終え、それぞれお客様は満足そうに部屋に戻って行きます。
せっかくですので、私も帰りみち、音大生に声を掛けました。
「すばらしい演奏でした。ここでどのくらい演奏しているのですか?」
「はい、約1年ちょっとになります。とても、楽しく演奏させてもらっています」
「ところで、さっきの演奏されていた曲は何という曲ですか。
実は、感動したので大阪に戻ってからカセットテープを買いたいもので」
「あの曲は、モーツァルトのピアノ協奏曲の〇〇です」
残念ながら、覚えていません。
でも、モーツァルトのピアノ協奏曲は買いました。
部屋に戻っても、あの美しい音色が忘れられません。
「ピアノって、こんなにも感動するんだ」
自分もピアノが弾けるようになりたいとまで考えました。
そうこうするうちに夜も更けてきたのですが、ピアノのことが忘れられず、
なかなか寝付けません。
少し、小腹が空いてきたので、二階にカップ麺の自動販売機があったので、
カップ麺を食べようと思い、浴衣のまま二階に降りていきました。
二階は、一階のフロントから吹き抜けになっています。
近くの椅子に腰かけてカップ麺を食べていました。
その時、ピアノの音が「ポロン」と聞こえたのです。
軽く押さえるようなかすかな一音です。
二階から一階のフロント付近を見ましたが、電気が消えています。
ピアノの辺りは、かすかな薄明りで照らされていますが、
人影はいません。
「何かの気のせいだろう」
カップ麺を食べて寝ようと立ち上がったとき、
また「ポロン」と聞こえたのです。
不思議に思い、一階のフロント付近のピアノまで行きました。
ピアノの鍵盤は閉まっています。
演奏席にも誰もいません。
不思議と怖さはありませんでした。
到着時のピアノ演奏が思い出され、近くの椅子に腰かけてピアノを見つめていました。
しかし、ピアノはもう鳴りませんでした。
翌朝、精算時のフロントの係りに昨日の話をしました。
フロントの係り員が話してくれました。
実は、今の音大生の前に演奏していたのは、地元の高校生だったのです。
その子は、地元でも有名なピアノがとても得意な女の子で、
とても、ピアノが上手く、将来を嘱望されていた子でした。
翌年には、東京の音大に入学が決まっており、本人も楽しみにしていたようです。
ところが、ある日、彼女は交通事故で帰らぬ人になりました。
家族もとても悲しみ、ホテルにも両親があいさつに来られました。
その時、ホテルでのピアノ演奏を本人がとても楽しみしていたことを聞きました。
それで支配人と話して、ピアノの近くに彼女がピアノを
演奏する写真を飾ってあります。
毎週、ご両親が花を飾り付けに来られます。
はい、今でも彼女が演奏している姿が目に焼き付いています。
ときどき、ピアノが好きなお客様が来ると弾いてくれます。
昨日も、きっとあなたに弾いてくれたのでしょう。
思わず、目頭があつくなりました。
「すばらしい演奏をありがとう」
思わず、彼女の写真に手を合わせました。
ホテルから見る新緑
kindle本を出版しました。
こんな感動する話や、ちょっとHな話を載せています。
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