「山で名前を呼ばれても返事をするな!」

世の中には、怪奇現象だとか?
都市伝説と呼ばれている怖い話がゴマンとあります。

とてもじゃないが、私はそれは苦手です。
でも、怖いものみたさもあり、知識だけはありました。

 

今回は、絶景の観光地”上高地”


 

今日は、大学生たちのゼミ旅行のお伴で上高地に来ました。

二台のバスに揺られて、長い道のりをやってきました。

 

今回は非常に厳しい日程で強行軍のスケジュールで上高地で研修です。

一日目は、大阪駅に午後九時集合でそのまま、バス車内で一泊します。

 

二日目の朝、上高地のバスターミナルに到着すると、

河童橋のすぐ近くのロッジに宿泊です。

 

THE PARKLODGE上高地(旧 五千尺ロッヂ)



 

そして、三日目の夕刻には、バスの乗って大阪に帰ります。

大阪駅に朝、到着して解散です。

 

みんな若いからこんな強行軍でも出来るのでしょう。

今から思えば、よく体力が持ったなぁ~と思います。

 

でも、まぁ~前から来たかった上高地にやって来れました。

学生さんたちは、岳沢湿原を抜けて、

穂高連峰の手前の岳沢へハイキングに出掛けました。

 

私も、その間は自由なので、せっかく来たから、

上高地で有名な明神池に行ってみたいと思い、

ロッジのフロント係りの人に尋ねました。

上高地の入口”河童橋”



上高地バスターミナルから明神池までは片道一時間のコースで

帰ってこれます。

「しかし、今日は天気が悪くて、雨が降りそうです。

しかも、ひょうとすると霧がでるかもしれません。

その先に行ってはいけません」

 

私は、まだ午前中だし、明神池の先に古池という池があるのを、

先ほどもらった上高地マップで知りました。

 

マップの上に、「古池」の写真が載っています。

とても幻想的な池に興味が惹かれ、どうしても行きたくなりました。

 

ここからだと、往復で三時間もあれば、行って帰ってこれるだろう、と考えていました。

でも、着ている服装は、登山スタイルではなく、普段着にロッジで借りたカッパと長靴でした。

はっきり言ってなめていました。

まるで遊歩道を軽い気持ちで散歩する、それも時間つぶしのことぐらいにしか考えていませんでした。

 

意外と早く、明神池は見つかりました。

川の流れに沿ってあるいて、思った以上に大きな池でした。

そこに神社が祭られて、鳥居をくぐると明神池が現れました。

「来て良かった、とても厳かで神妙な気持ちになるなぁ」

ここまでで約一時間ほど掛かりました。

パワースポット”明神池”



「ここまで来たら、古池まで行ってみよう、まだ、時間も早いし」

午前十一時過ぎです。

でも、雨が本降りになってきました。

それに、少し霧のような靄が出始めていましたが、古池目指して山の方へ向かいます。

霧の中

 

明神池までは、遊歩道で道がわかりやすかったのですが、

古池まではなかなか分かりづらく、標識もない。

それに、雨がどんどん降ってきて、霧が出て、乳白色の靄の中を手探りで歩いている状態です。

坂道は、雨で滑るので歩くスピードが鈍ります。

「これはまずい、前が見えない」と霧で数メートル先がまったく見えません。

その時点で、引き返せば良かったのですが、

時計を見ると午後一時とまだまだ時間があったので、先に進みました。

 

それが古池までの道なのか?見当が付かなくなっていました。

一度までならず、二度、三度と滑ってカッパが破けて腰のあたりはドロドロです。

残念ながら、この時点で引返すことにしました。

と言っても、どちらから来たか?判別出来ません。

やばいと思い、多分こっちじゃないかと思う方向に急いで行きました。

しかし、私が帰り道だと思った方向は、まったく見当はずれの方角です。

コンパスも登山地図もありません、簡単な観光マップだけです。

そのマップも雨でグシャグシャで役にたちません。

その頃は、携帯電話もなく、公衆電話もありません。

 

もう、必死です。

ただ感に頼り、駆け下ります。

またも滑り落ち、したたか腰を打ちました。

午後三時を回っています。

早く、帰って帰り支度をしなければなりません。

焦れば、焦るほど迷ってしまいました。

「あ~ぁ、まったくわからない?どうしよう」

 

そのとき、私の名前を呼ぶ声がしました。

おっ、誰か探しに来てくれたんだ。

声のする方に向いますが、姿が見えません。

「あれ~っ、誰だろう?」

また、名前を呼ぶ声がしました。

その声は、とても懐かしい響きがあります。

ふらふらとそちらに行きますが、誰もいません。

山の中の霧

 

 

そのとき、ふと、

「山で迷って名前を呼ばれても返事をしてはいけない、

返事をすると山の怪に谷底に引きずり込まれる」という話を思い出しました。

また、名前を呼んでいます。

思わず、「助けて」と返事が出そうになったとき、

目の前にあざやかな青い蝶が一匹ひらひらと舞っています。

青い超

その青い蝶は、私の周りをひらひら舞い、「行ってはいけません」

と教えてくれているようです。

ひとしきり私の周りを舞うと坂道を下り始めました。

まるで、「こちらです。こちらへ着いて来てください」

と言わんばかりにひらひら舞いながら降りていきます。

 

時計を見ると午後四時を回っています。

雨は止まず、霧も晴れてきません。

でも、私を呼ぶ声は聞こえなくなりました。

とにかく、あの青い蝶に着いて行こう。と決めました。

 

滑りながらも、徐々に降りていくと川のせせらぎの音がします。

すると、目の前に遊歩道が出てきました。

その遊歩道に見覚えがあります。

降りて来た道を振り返ると、とんでもない斜面を登っていたんだ。と実感しました。

ここまで来たら、遊歩道に沿って帰らば、ロッジまで戻れると

「ほっ」としました。

その時には、青い蝶は消えていました。

 

私は、何度か、こういう無鉄砲な体験をしますが、

その度ごとに救われています。

「あ~ぁ、今回も救われました」と手を合わせずにはいられません。

 

河童橋たもとの【絶景の宿】 上高地ホテル白樺荘


 

白樺荘は河童橋の目の前

大正池の朝

 

添乗員時代の数々のエピソード

kindle本「散々な添乗員日記」

「山で名前を呼ばれても返事をするな!」
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